真っ白な机に上履きで
以前の投稿で、小学生の時に特別教室を生徒たちで掃除する機会があったという話をしたが、今回もまた別の教室の掃除のときの話である。
確か5年生の時だったと思う。私は家庭科室の担当になった。
音楽室より広いし机や椅子があるからか、私含めて5人で掃除をすることになった。
男子4、女子1だった。
女子の名前はアズサちゃん。スポーツが得意なボーイッシュな感じの子だった。
人数も多かったので掃除自体はテキパキと進められた。
流しを綺麗にし、大きな机を拭き、準備室の埃を掃き出し、椅子をどけて床を拭いた。
そして最後に窓を拭くことになった。
アズサちゃんが「自分が窓を拭くから男子たちは椅子をもとの位置に戻しておいて」というので、男子たちはそれに従った。実に合理的な指示である。
そして高い位置の窓を拭くために、アズサちゃんは窓際の平らになっている部分に上った。
上履きのままだったが植物のポットが置いてあるような部分なので正直汚いだろうし、実際誰も靴を指摘することはなかった。
しかし外側の窓を拭き終わった後、アズサちゃんは床に降りることなく男子が並べている椅子を踏みつけ、そのまま机に乗ったのだ。
授業で6グループくらいに分かれて調理実習を行う真っ白な大きな机の上を3歩くらい歩き、椅子の上を渡り、さらに隣の机の上を3歩くらい歩き、椅子を踏み、たどり着いた廊下側の窓枠に足をかけて高い位置の窓を拭き始める。
外側の窓から廊下側の窓まで、一度も床に降りることなく教室を横断したのだ。
当然男子の一人が「おい~!」といった感じにツッコんだが、アズサちゃんは「ごめんごめん、拭いといて」と全く悪びれる様子もない。
机は拭いたばかりで少々濡れていたせいもあるのか、白い机にはアズサちゃんの靴跡がくっきりと残っていた。
折角拭いて綺麗にしたばかりなのに。そもそも食材を置き、調理を行いそれを食べる机の上を汚い靴で歩くなんて。さらに本人は別の場所を掃除しているとはいえ他人に靴跡を掃除させるなんて。そんなことを考えながら私は勝手に興奮していた。
私は靴跡を舐めまわしたい衝動と元気になった部分を必死に抑えつつ、靴跡を拭いてまわった。
上履きの汚れはワックスとかの油分が多いせいか、拭いて綺麗にしたというより塗り伸ばしてごまかしたといったほうが近いような感じだったが。
そして最後。廊下側の窓を拭き終わったアズサちゃんは何を思ったのか、椅子を踏んだ後わざわざ再び机の上を歩き、教室の真ん中でようやく床に降りたのだ。
当然机と壁の間にはスペースがあり、椅子から床に降りることは十分可能だったし、それが自然な動きだろう。明らかに意図的に、わざわざ机に上がっているのだ。
当然、さっき靴跡を拭いたばかりの白い机に再び汚い靴跡がついていた。
さすがに本人も「うわ、ヤバ…」と言い自分で机を拭いていたが、食材を扱う白い机というある種の神聖な場所を靴で踏みにじるという快感に抗しきれなかったのだろうか。
靴下が汚れるのが嫌という理由で靴のまま部屋に上がり込んだアカネちゃんとはまた違う、普通なら靴どころか上に乗ること自体ないであろう場所を靴で歩いたアズサちゃんも私の印象に強く残っている。
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